中京3レース目、1番人気馬のオッズは約2倍台後半。
私は意を決し1000円を賭ける。
的中すれば今までの負け分を大きく取り戻すことができる。
1000円といえば、私の時給以上の金額である。
(※筆者は33歳大卒の正社員である)
あの苦しい1時間を乗り越えても手に入れられない金。
そんな大金をこんな不確かなものに賭けている。
2年前の自分では信じられない行動である。
私は祈った。
こんなにも心の底から祈ったのは久しぶりかもしれない。
そして、結果を恐る恐る見てみる、、、
的中!!!
単勝オッズ2.9倍!!!
払戻し2900円!!!!!
うっああああああああああぁっぁあああぁぁぁぁぁ、、、
社会の底辺loserの脳内に駆け巡る脳内物質
β-エンドルフィン・・・!
チロシン・・・!
エンケファリン・・・!
バリン、リジン、ロイシン、イソロイシン・・・!!!
勝った!!
本当に勝ちやがった!!!
この私が、、、、、、
勝ったんだっ!!!!!
えっと、、、ここまでの賭け金が1800円だから、
2900円ー1800円=1100円
1100円勝ち!!!
...こんなに簡単に1100円が手に入っただと?
なんだこれは??
こんなことがあっていいのか?
これが、、、競馬!!
これが、、、ギャンブルか!!!
やれる!!
やはり間違っていなかった。
この戦略で勝って勝って勝ちまくってやる!!!
もう止まらねえ。
退かぬ!! 媚びぬ!! 省みぬ!!
……
とはいえ一旦冷静になれ。反省を活かしていけ。
ちゃんと2レースは様子見をしよう。
反省を活かし東京3レース目は見送った。
しかし、それを嘲笑うかのように結果は1番人気馬が1着。
単勝オッズは3.5倍。
くっそっっ!!!
100円でも賭けていれば、、、
襲ってきた後悔の念。
自分でも信じられないような賭けたい衝動に駆られる。
......いや、冷静になれ。これは必要な保険。とにかく今はまだ待て。
次も様子見だ。
そう言い聞かせ、中京4レースも見送る。
しかし、次も結果は1番人気馬が1着。
これで3連続1番人気馬が1着となった。
......
これ、様子見しないほうがいいんじゃね?
社会の底辺loserの脳内にささやかれる魔の声。
確かに過去の結果を見てみても1番人気が連続で外れるのは多くても5,6回くらいであった。ほんとにたまに7.8回連続があって、私が見た中では10回以上は観測できなかった。
......
何はともあれ。今、1番人気が3連続で来たんだ。
次は見送る。そして1番人気でなかったら次から様子見はなしだ。
東京4レース目の結果は4番人気馬が1着だった。
よし、1番人気じゃなかったな。勝負再開だ!!!
1100円勝ちをして、調子づいた私は勝負を再開できることを心底喜んでいた。
その時の私は、勝つ未来しか見えていなかったのだ。
中京5レース目、1番人気馬のオッズは約2倍。
100円をばちこりと賭けていく。
ここは的中してもしなくてもどっちでもいい。
的中すれば次も100円を賭け、外れれば倍プッシュするだけ。
結果は、外れ。
東京5レース目、1番人気馬のオッズは、、、1.2倍!!!
1.2倍だと、、、??
待て、ということはさっきの100円を取り戻して利益を出すには1000円を賭けないとならないのか?勝負再開から2レース目で1000円?
もしこれで来なかったら次は2000円だぞ。
予想オッズをみて、調整をしていくとはいったもののこれでは賭け金が跳ね上がりすぎてしまう。
どうする、、、?
駄目だ、さすがにここで1000円は賭けられない。
それは、あまりにハイリスクローリターンというものだろう。
むしろオッズ約10倍にもなっている2番人気馬に賭けた方がどう考えても期待値は高いはずだ。
私は渋々2番人気馬に100円を賭けることにした。
結果は、、、1番人気馬が1着。
オッズはさらに下がり1.1倍になっていた。
......
いや、これは仕方ないだろう。
もし1000円を賭けていてもトントンだった。
ここはこれでいい。気を取り戻して次だ。
中京6レース目、1番人気馬のオッズは約3倍。
今の負け分は200円。オッズは3倍だから200円でいい。
倍プッシュの400円といきたいところだが、前のレースで1番人気が来ているんだ。
ここは200円でいい。
結果は、、、1番人気馬が1着。
的中!!!
単勝オッズ3.1倍!!!
払戻し620円!!!!!
勝ち分は220円。(620-400)
いい感じだ。これで合計1320円も儲けた。
これでいい。これで、、、
だが、なんだ? このモヤモヤは?
......400円賭けていれば、、、
うるせえ。それは結果論だ。
あそこは200円で良かったんだよ。
それしかないといっていい。
そう、私は徐々に憑りつかれていたのだ。
ギャンブルに潜む魔物に。
東京6レース目、1番人気馬のオッズは約3倍。
的中した次のレースだが様子見はせず100円を賭ける。
結果は、もちろん外れ。
中京7レース目、1番人気馬のオッズは約3倍台後半。
2倍以上なので100円を賭ける。
結果は、当然のように外れ。
東京7レース目、1番人気馬のオッズは約3倍。
予定通り200円を賭け。
結果は、外れ。
中京8レース目、1番人気馬のオッズは約1倍台前半。
またかよ。正直1倍台前半は勘弁してほしい。
予定では400円だが、仮に最終オッズが1.5倍だとしても負け分を取り返せない。
1000円賭けたとしても、たった100円勝ち。(1500円-1400円)
またオッズ約5倍の2番人気馬に賭けるか、、、
そうだな、1.5倍以下だったら2番人気に賭けることにしよう。
そうしないと賭け金がとんでもないことになる可能性がある。
そう考え、急遽、 1番人気倍プッシュ戦略のルール変更をし、
約5倍の2番人気馬に200円賭けた。
的中すれば約400円勝ちである。(1000円ー600円)
結果は、、、1番人気馬が1着。
最終オッズは1.3倍だった。
社会の底辺loserの中で湧いてくる疑念。
......1倍台は勝率高いからむしろ積極的に賭けるべきなのか?
よしっ、次は1倍台にちゃんと賭けよう!!
(コロコロ方針を変えるなよ。情緒不安定かよ。)
東京8レース目、1番人気馬のオッズは約1倍台半ば。
さっそくリベンジの機会が来やがった。
今の負け分は600円。仮にオッズが1.5倍だとして1000円を賭けたのでは利益を出せない。1500円なら2250円ー2100円=150円で勝ち分が出る。
もし最終オッズが1倍台前半になったとしてもトントンくらいにはなる。
ここは1500円賭ける。
1500円という過去最高の賭け金だったが、今までの傾向から来る予感をビンビンに感じていたので不思議とすんなり購入し落ち着いた気持ちで結果を待てた。
そして、結果は、、、
外れ!!
2番人気馬が1着!!!
はああああああああああああああああああああああああああああああ
ふざけんなよっ!!!
私は激しい後悔に襲われた。
方針を変えなければ的中していたのだ。
あろうことか方針を変えた途端、それを咎めるかのように2番人気馬が1着という結果。1着が2番人気馬でなければここまでの後悔に襲われなかっただろう。
やってくれるぜ。
どうあっても私に勝たせたくないようだな。
だがな、もう決して迷いはしない。
黙々と淡々と粛々と1番人気馬に賭け続けてやる。
そう意気込み、中京9レースに挑む。
中京9レース目、1番人気馬のオッズは約2倍台。
今の負け分が2100円。その約2倍4000円を賭ける。
4000円、、、さすがに購入する時に手が震えて吐き気みたいなものを感じた。
結果は、、、外れ!!!!!
......
うっっ、まじかよ。
これで6連続外したことになる。
しかし途中で血迷ってしまった結果、1番人気としてはまだ2回連続しか外れていない。落ち着け。1番人気に賭け続けていけば必ずいつか的中するんだ。
それは決まっている。そこは揺るがない。
そう言い聞かせ、東京9レースのオッズを見てみる。
東京9レース目、1番人気馬のオッズは約3倍台半ば。
それを見て謎の安堵感を覚える。
よかった、、、1倍台じゃなくて。
3倍台半ばなら、今の負け分6100円を取り返すなら倍プッシュする必要はない。
4000円、いや3000円でも大丈夫だ。とりあえず的中して仕切り直そう。
まだ大きく勝つところじゃない。
3000円をばっこり賭けていく。
頼む、、、来てくれ。
結果は、、、外れ!!!!!
クソっがっっ!!!!!
(いやいや、3倍台がそうそう簡単に的中するわけないでしょうが)
やばい、、、マジでやばい。もう1万円近く負けている。
いや、落ち着け。冷静になれ。これで1番人気は3回連続外れている。
そろそろ来る頃だ。とりあえず、ギリ負け分を回収できるように賭け続けて早く仕切り直そう。
中京10レース目、1番人気馬のオッズは約3倍台前半。
よし、また3倍台。何も考えるな。恐れるな。淡々とやれ。動揺したら付け込まれる。
5000円でいい。それで負け分9100円を取り戻せる。
手汗がひどい震える指で5000円の馬券を購入する。
そして、ガチ祈り。
結果は、、、外れ!!!!!
うっ、、、うっええ、うご、、うげろ、ごっ…。
(汚ねえよ、ほんと死んでくれ。何が淡々とだよ、どんだけメンタル弱いんだよ。)
結果を見た瞬間、吐きそうになった。
これで8連続外し、1番人気馬としては4回連続来ていない。
ふぅ~~~~~~、まあ、、、、、、4回くらいは外してくるわな。
ここからだ。ここからが本当の勝負だ。
(一体誰と戦ってんだよ。大丈夫かよ、このおっさん。)
東京10レース目、1番人気馬のオッズは約2倍台前半。
気付けば負け分は14100円という金額になっていた。
取り戻すには2万円ほど賭けなくてはならなくなっていた。
その事実を前にして悪寒がした。そこで初めて私はとんでもないことをしているのではないかと気づいた。だが、引くわけにはいかない。
この賭け金を無駄にしないためにも突き進むしかないのだ。ただ突き進むのみ。
東京10レース、1番人気馬に20000円を賭けた。
死闘は続く