同級生「私は何も知りませんよ。あなたが知っているんでしょ、社会の底辺loser」
【第7章:難渋】
アイスハニーカフェ・オレとやらは想像以上に甘かった。
しかし、コンビニで売っているカフェオレの甘さとは違って上品な感じがした。
まあ、ここずっと喫茶店もコンビニも行っていない私が言うのもあれだけど。
借金をしてからというもの以前にまして、食や物にお金を使わなくなった。
正確には使えなくなった。
そんな私が久しぶりに高価な美味しい飲み物に手を出したというのに、この状況、この緊迫感のせいで満足に味わえない。
人と関わるのが苦手な私だが、とりわけ、やはりこの同級生は苦手だ。
なんだろうな、正義の圧? 陽キャの圧?
自分に自信を持っている人間特有のオーラ、雰囲気みたいなのを物凄く感じる。
私とは対照的な人間。
でも、だからこそ話してみようと思った。話してみたいと思わされた。
自分と対極のような存在が私をどう思うのか?どんなことを考えるのか?
おそらく彼女はギャンブルなんていうものとは、借金なんていうものとは無縁の人生を歩んできたに違いない。
そんな彼女が私という人間をどう捉えるのか。聞いてみたくなった。
社会の底辺「〇〇さん、私が絶望したのは結果ではなく、その過程なんだ。」
同級生「あ、昔みたいに呼び捨てでいいよ。なんかむず痒い。私も昔みたいに社会の底辺って呼んでいい?」
社会の底辺「ああ、何でもいいよ。社会の底辺でもクズでもゴミでも。」
同級生「卑屈なところも全然変わらないね(笑) あと社会の底辺が自分のこと”私”って言ってるのすごい違和感ある(笑)」
社会の底辺「一応社会人ですから。」
同級生「あ、話の腰を折ってごめんなさい。過程ってどういうこと?」
社会の底辺「俺はボーナスを全額、ギャンブルに使う気なんてなかったんだ。最初は、3万円で少し遊ぶくらいの気持ちでいたんだ。」
同級生「あーーはいはい、負けて熱くなって使い込んじゃった感じでしょ?」
またもや、この同級生は知ったような口を叩く。しかも残念ながら、正解である。
社会の底辺「正解、、、いや、いやいや、それはそうなんだけど負け方があまりにひどいんだよ。聞いてくれ。」
同級生「......はい、どうぞ」
なんだ、その白けた顔は。
社会の底辺「512分の1だ。512分の1を引いて負けて熱くなってお金をつぎ込んでしまったんだ。」
同級生「??? 勝算が高い勝負で負けたってこと? 社会の底辺、なんのギャンブルしてるの? 競馬?」
彼女から話の興味が薄れていることが感じられる。
社会の底辺「いや、オンラインカジノ、、、」
同級生「えぇっと、たしか阿武町であった、、、誤送金を使い込んでしまった人がやっていたものだよね?」
社会の底辺「まさしくそうである。そのオンラインカジノの中にあるバカラというほぼ2分の1で当たるゲームを初っ端9回連続外してものの数分で3万円を溶かしたんだ。」
同級生「そういうこともあるでしょ。2分の1を9回連続当てることだってあるでしょ?まあ、最初に9回連続も当たらなかったのは残念だね。」
軽い!なんかすごく軽いよ、この人。全然伝わっていないような気がする。
噛み合っていない。
いや、待て。
私が、おかしいだけなのか?
私は変な感覚になりつつ、話を進める。
社会の底辺「その後、熱くなって15万入金して、次は4分の1で当たるゲームを13連続外して溶かした。そして、また15万入金してバカラで負けた。」
違和感。この時、話していてとてつもない違和感を覚えた。
同級生「15万!?結構使ったね。でも待って、4分の1を13回外すってさっきの2分の1を9回外すことより起こりやすくない?なんでそんなのに15万も使っちゃったの?というかそんなに当たらないのになんで続けるの?」
社会の底辺「......なんででしょうね、、、いや、待て。待て待て。普通そんなに外れまくると思うか?普通どこかで当たると思うだろ?こういうのは負けを取り返すまで続けてしまうものなんだよ。」
同級生「たしかに悔しくて当たるまでやっちゃうかも。でも13回で15万もなくなるって、、、それって1回に1万円もかかるゲームなの?」
社会の底辺「最初は15ドル、、、2000円くらいなんだけど、負け続けるから取り返そうと賭ける金額を上げていって、、、最後は1回に3万くらい、、、」
同級生「それはやったらダメでしょ、取り返そうと金額上げていくのはまずいよ。その4分の1のゲームもバカラ?も独立事象なんでしょ?」
社会の底辺「......独立事象ですね、、、」
厳密に言えば、バカラは独立事象ではない。残りのカードが変化してくことで、期待値もごくわずかに変化していく。従属事象のゲームだ。だが、その変化は微々たるものなので独立事象と言っても差しつかえないだろう。
同級生「それで、何があったの?」
本日3回目。3回目の同じセリフである。
社会の底辺「なにって、、、今、話しただろ?」
同級生「......まさか、それだけなの?」
社会の底辺「......」
彼女は呆れたような、少し怒ったような表情になった。
18年以上前によく見た表情だ。そして、、、
同級生「社会の底辺、、、あのね、、、」
彼女は衝撃的なことを口にする。
つづく