社会の底辺loserのブログ

趣味や特技、役立つ情報を伝えていきます。

俺は一生奴隷だ

 

同級生「社会の底辺、、、あのね、、、」

 

この時まで私には自負があった。

自分は誰よりも不運で不遇で不幸だという自負が。

そう思わないとやってられなかった。

この20年間、とても生きていられなかった。

どうか、弱くて愚かで醜い自分を許して欲しい。

 

【第8章:崩壊】

私の負けっぷり、クズっぷりを一通り話し終え、これでもかというくらい私のアホさが伝わったところで彼女は重々しく口を開いた。

お、説教か?

久しぶりに彼女のありがたい説教が聞けるのか!?

その実直な性格で正論を振りかざし、私というクズを説き明かすのか?

私はそれを期待していた。

だが、実際に彼女の口から出た言葉は想像のはるか斜め上をいくものだった。

 

同級生「私、まだ、、、独身なんだよね、、、」

 

・・・は? この人、急にどうした?

唐突すぎるだろ。リアクションに困るんだが。

 

社会の底辺「......それは、意外だな。〇〇、学生時代めちゃくちゃモテモテだった印象が強いんだけど。」

 

なんとか返した。そう、彼女は非常にモテた。
私の高校はそれなりに進学校だったこともあり、当時クラスメイトで恋人がいる人はかなり少なかったと思うが、彼女は高1の時には彼氏がいた。

男女分け隔てなく、よく喋る彼女だったので何も不思議ではなかった。
まあ、だからこそ女子の敵もそれなりに多かったが、、、

 

同級生「本当は今年の春には結婚するはずだったのにね、、、2か月前に破談したの。こんなこと話されても困ると思うけど、私の母が認知症でね、、、特に最近ひどくて、、、実は結婚が破談するの2回目(笑)」

 

彼女は悲しそうに話しつつも最後は自虐的に笑ってみせた。

話が重すぎる。やめてくれ。不幸なのは自分だけでいいんだよ。

私の思いとは裏腹に彼女は話し続ける。

 

同級生「今回は本当にメンタルやられた、、、ラストチャンスだと思っていたから。母のことは関係ないって言ってくれてたのに(笑) でも、徘徊したりする親族がいたら、やっぱり無理だよね。まさか自分がこの歳まで結婚できないとは夢にも思わなかった。人生ってわからないよね、ほんと。」

 

彼女の話し方から暗くなり過ぎないように努めているのがありありと伝わってくる。
それが、とてもつらい。

 

社会の底辺「ラストチャンスって、、、まだ全然チャンスあるだろ。今のご時世、40代で結婚するなんて普通だろ。」

 

同級生「優しいね。でも、さすがにもう無理かな。母のこと見なければいけないし、、、社会の底辺は結婚は?」

 

社会の底辺「もちろん、してないよ。そんなことより、〇〇さん、ここにいて大丈夫?」

 

結婚どころか童貞なんだけど、、、借金250万の36歳童貞

 

同級生「もちろんって(笑)今日は弟が家にいるから大丈夫。結婚はともかく、今後のことを考えると頭が痛いよ。」

 

それからも彼女は何かを吐き出すかのように話してくれた。

母を見るために2年前、民間経験者採用で市役所職員になり実家に帰って来たこと。

家族の誰かが母を見ていないとならないから、弟は夜勤で働ける警備会社に勤め、昼は弟、夜は彼女と父が家にいるようにしていること。

少しの時間でもいいから施設に母を預けようと思ったが、すごい勢いで母が嫌がり叶わなかったこと。

母は波がすごく、調子がいい時は昔とほぼ変わらず会話できること。そして、それがまた厄介であること。

 

同級生「これで母の状態が良くなっていくならいいんだけど、悪くなる一方で。正直、やりきれないよ。はぁ、こんなことなら20代前半にでも結婚しておくんだったなぁ。結果、離婚することになっても一度はウェディングドレスを着たかった、、、ふふ、社会の底辺、聞き上手だからついつい話すぎちゃった(笑)」

 

やめてくれ。本当にやめてくれ。なんなんだこれは。

彼女は順風満帆な人生を歩んでいるべき人間だろ。

今日は偶然にも再会した同級生の輝かしい人生の美談を聞いて、それをテキトーに褒めて、自分との差を痛感する。そういう話だろ、そういうオチだろ。

いや、結果的に自分との差は痛感しているが、、、そうじゃないだろ。

これじゃあ、まるで、完全に、私がただの馬鹿じゃないか。

不運でも不幸でもなんでもないただの馬鹿ではないか。

救いようのない間抜けではないか。

 

同級生「ねっ。私もそれなりに大変でしょ。だから社会の底辺もいつまでもくよくよしてないで頑張りなさい。」

 

彼女は一体何をしたのだろうか?

あるいは何をしなかったのだろうか?

彼女の話にひとつでも彼女の悪いところがあっただろうか?

あってくれよ、でないとあまりにも救いがないだろ。

 

ああ、でもやっぱりそうか。

やはり、私と彼女はどこまでいっても真逆の人間なんだと思う。

 

自分の過ちを棚に上げて、さもとんでもない不運に見舞われたかのように嘆き、現実から目を背け続ける私。

 

一方、彼女は現実を受け入れ立ち向かい気丈に振る舞っている。

 

社会の底辺「〇〇、変わらないな。やっぱり、お前は立派だよ。俺とでは人間としての器が、格が違う。今日、話せて本当に良かったよ。爪の垢を煎じて飲ませてもらうよ。」

 

私はこの時、逃げ出したくてたまらなかった。崩壊してしまう。

自分が自分でいられなくなる。

だから、無理矢理にでも話を終わらせようとした。

もう十分すぎるほどよくわかったから。

自分がどうしようもない人間だってことは!!!

 

でも、彼女は終わらしてはくれなかった。

 

同級生「嬉しいこと言ってくれるじゃん。でも、私は社会の底辺が思っているような人間ではないよ。だって、私は、、、、」

 

驚いた、本当に驚いた。

この人はこんなにも儚い顔をする人だったんだと。

「神妙な面持ち」という言葉は今まさに、この瞬間、この場面、この人のためにある言葉だったんじゃないかとさえ私は思った。

神妙な面持ちで彼女は吐露する。

 

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同級生「だって、私は、、、お母さんなんていなくなっちゃえばいいのになんて私が思いませんようにって毎日願っているんだから。」

 

 

つづきますが、次回、最終回とさせていただきます。