社会の底辺loserは命に嫌われている
軽々しく死にたいだとか
軽々しく命を見てる
社会の底辺loserは命に嫌われている
お金がないので今日も
一日中労働に従事する
生きる意味なんて見いだせず
無駄を自覚して息をする
朝7時に起床した。大学時代に戻ったり、異世界に転生したりはしていない。
いつも通り、絶望感に溢れた最悪な朝だ。
多額の借金を抱えた35歳童貞は今日も必死に生きる。
朝食や髭剃りを済ませ、7時45分に家を出た。
通勤のためだけにローンで買った車。死んだ目でラヴィット!とかいう陽キャの番組を右から左へ聞き流しながら無心で運転。
8時15分頃、職場に到着。圧倒的一番乗り。
私は、この職場に入社して約3年半ほぼ毎日一番乗りで出勤している。
決してやる気があるとか、意識が高いとかではない。
致命的に仕事が遅いからである。
席に着き、すぐにメールを確認。案の定、見たくもないメールしか来ていない。
それに返答し、今日行くことになっている担当先の監査の準備に取りかかる。
前日にそれなりに準備はしてあるので、持ち物の確認がメインだ。
今日はその担当先の決算報告もあったので、念入りに持っていく資料の確認をする。
午前中はいつも通り私が監査&記帳代行を行い、午後には所長も合流し決算報告だ。
そうこうしているうちに9時になり朝礼が始まった。みんな、覇気のない気怠そうな声で今日の予定を言っていく。
社会の底辺loser「午前から〇〇の監査、そのまま午後は決算報告です。」
朝礼が終わり、所長のところへ向かう。
社会の底辺loser「所長、今日はよろしくお願いします。」
所長「はい、よろしく。1時半には着くと思う。ここ数年、〇〇は5千万切ってしまって今後もかなり厳しいと思うけど、一応※本則になることも考えてインボイスの説明を今一度しておこうか。今は簡易なんだよね?」
※本則課税:実際に売上にかかった消費税から、実際に支払いにかかった消費税を差し引いて計算して納税。売上5千万超えると問答無用で本則。
社会の底辺loser「はい。※簡易の方が大分有利な状態です。外注が多くなっているので以前より大分粗利が落ちています。」
※簡易課税:売上からみなし仕入率を控除して納税。売上5千万以下だと本則か簡易か選べる。
そう、、、今日、決算報告する先はコロナの影響で売上が減少し、それにより従業員への給料がままならなくなり、人が辞め、外注に頼ることになり、粗利が落ちるという絵に描いたような悪循環になってしまっている企業だ。
お通夜のような決算報告になることは容易に想像できる。しかし、現状を嘆いていても仕方がない。大事なのは今後どうするか、、、
そんなことを考えながら社用車を運転していて、私は可笑しくなってしまった。
自分のことを棚に上げ、何が今後どうするかだよ。まずは自分が今後どうするか考えろよ、、、
車で運転すること40分。担当先の小さな町工場に着いた。扉を開けると、私が初めて来た時10人近くいた従業員は今では半数がいなくなり、社長と奥さんと従業員3人の5人しかいない。軽く雑談をした後、作業に取り掛かる。ここは奥さんが綺麗な字で現金出納帳、売掛帳、買掛帳などをつけてくれている。請求書や領収書などの証憑もきれいに綴ってくれてあり、大変作業がしやすい。私は持ってきたパソコンでそれらを確認しつつ黙々と打ち込む。そんな時、陽気な社長さんがいつもと変わらない明るい声でこんなことを言い出したのだ。
社長「社会の底辺さん、相変わらず消費税高いよなぁ、、、利益はこんなに落ちてるのに消費税は去年と大して変わらんもんな。」
そう、今回の決算で利益は30万ほどだったのだが、消費税は60万円の納付である。
ちなみに法人税は10万ほど還付(中間法人税の戻り)
社会の底辺loser「利益は落ちていますが、減価償却や利息といった消費税控除できない経費が増えていますから。あと、中間消費税も少なかったので決算で多くなってしまいましたね。」
今となってはゼロゼロ融資の実質無利子期間という夢のような時間も終わった。
元金据置期間も終わった。ツケを払う時が来たのだ。
私は社長と話していて具合が悪くなった。とても他人事には思えなくて。
そして、社長は今まで聞いたことのない暗い声でこう言ったのだ。
社長「社会の底辺さん、所長さんが来た時にも話すけど、、、
自己破産を考えている。
続く